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Shuhei Nakaso

AIは”作業者”から”戦略パートナー”へ:ixis式「週次リカバリープランGem」徹底解説

ブログ 2025.09.17

はじめに:その週次会議、”報告会”で終わっていませんか?

「先週の実績は…」「A案件の進捗は…」

多くの企業で毎週行われる営業会議。しかし、その実態が単なる進捗報告の場となり、具体的な「次のアクション」や「潜在的なリスク」についての議論が深まらない、という課題を抱えてはいないでしょうか。データ集計と報告資料の作成に時間を費やした結果、未来に向けた戦略的な対話の時間が失われてしまうのです。

これは、システムの安定稼働を守るための「リカバリープラン」と同じくらい、ビジネスの目標達成を守るための**営業戦略における「リカバリープラン」**が重要であるにも関わらず、その策定が後回しにされている状況と言えます。

私たち株式会社ixisのシステムデザインチームは、この根深い課題を解決するため、Googleの生成AI「Gem」を活用した独自のソリューションを開発・運用しています。

本記事では、単なるデータ集計ツールとしてではなく、チームの**「極めて優秀なビジネスパートナー」**として設計された、私たちの「週次リカバリープランGem」をご紹介します。このGemが、いかにして私たちの週次会議を過去志向の”報告会”から未来志向の”作戦会議”へと変革させたのか、その具体的な命令書(プロンプト)の裏側まで、余すことなく解説します。

我々の武器:「週次リカバリープランGem」の設計思想

私たちが開発したGemの目的は、単にkintone等に散らばる案件データを集計し、グラフ化することではありません。私たちの目的は、データから戦略的な洞察を得て、チームが翌週から即座に実行可能なアクションプランと、事前に回避すべきリスクの叩き台を自動生成させることです。

そのために、私たちはGemに以下のような役割(ペルソナ)を与えました。

あなたは株式会社ixisのシステムデザインチームの極めて優秀なビジネスパートナーです。単なる作業者ではなく、データから戦略的な洞藝を得て、具体的なアクションを提案する能力を持っています。

AIに明確な役割と期待値を設定すること。これが、ありきたりな回答ではなく、事業の文脈を深く理解した、示唆に富むアウトプットを引き出すための最初の鍵となります。

実際の利用フロー:3ステップで戦略的アウトプットを得る

では、実際にどのようにこのGemを利用しているのでしょうか。複雑な操作は一切不要で、たった3つのステップで、毎週の作戦会議の土台が完成します。

Step 1: kintoneから最新の案件データをコピーする

まず、私たちが案件管理に利用しているkintone(もしくは任意の管理ツール)から、最新の案件データ一覧をコピーします。特別な加工は必要なく、表示されているデータをそのままコピーするだけです。

Step 2: Gemにデータを貼り付けて実行する

次に、用意しておいた「リカバリープラン作成Gem」を呼び出します。そして、先ほどコピーした案件データをプロンプト入力欄に貼り付け、送信します。

Step 3: 週次リカバリープランが自動で生成される

わずか数秒後。Gemはペタッと貼り付けられた生のデータ文字列を瞬時に解読・分析し、定義されたフォーマットに従って、戦略的な「週次リカバリープラン」を生成します。

このように、人間が行う作業は「コピー&ペースト」のみ。 これだけで、毎週の会議に必要な分析、サマリー、アクションプラン、リスクの叩き台がすべて揃うのです。

Gemの思考プロセスを分解する:戦略的プロンプトの全貌

それでは、私たちの「ビジネスパートナー」が、先ほどのような精度の高いリカバリープランを、どのような命令を受けて生成しているのか。その心臓部であるプロンプトを4つのパートに分解して見ていきましょう。

1. 「事実」の整理:実績と予測の完全自動化

【ルール①】実績と予測の表の作成

案件データと固定予算データを基に、「実績と予測」の表を自動で作成してください。集計期間はヘッダー情報の作成日を含む月から3ヶ月間です。確定済、見込(高)、予算、合計見込、予算達成率を自動で計算してください。

これは最も基本的な機能ですが、極めて重要です。毎週、担当者が手作業で行っていたデータ集計と計算を完全に自動化します。これにより、チームメンバーは面倒な単純作業から解放され、人間にしかできない「分析」「戦略立案」「顧客との対話」といった高付加価値な業務に集中する時間と思考のリソースを確保できます。

2. 「要約」による状況把握:AIの視点で機会損失に光を当てる

【ルール②】サマリーの記述

作成した表の下に、各月の状況を要約したサマリーを記述してください。その際、集計から除外した「見積中(中)」「見積中(低)」の案件に必ず言及し、「これらの確度の低い案件を引き上げるためのアクションが、目標達成の鍵となります。」といった提案を含めてください。

単なる数値の羅列だけでは、状況の本質を見誤ることがあります。このルールは、Gemに「ビジネスパートナー」としての視点を持たせるための重要な仕掛けです。

特に注目すべきは、あえて確度の低い「見積中(中)」「見積中(低)」の案件に言及させる点です。日々の業務に追われていると、どうしても確度の高い案件にばかり目が行きがちです。しかし、中長期的な目標達成のためには、これらの中・低確度案件をいかに引き上げていくかが生命線となります。

Gemが毎週、機械的に「目標達成の鍵となります」と指摘してくれることで、チームは忘れがちな重要な視点を常に持ち続けることができるのです。

3. 「行動」の提案:戦略パターンに基づくアクションプランの自動生成

【ルール③】アクションプランの叩き台の自動生成

案件データを分析し、以下の戦略的パターンに基づいて、具体的なアクションプランの叩き台を生成してください。

パターンA(最優先クロージング): 翌月までに「見積中(高)」の案件があれば、それらを確実に受注するためのアクションを最優先として提案…

パターンB(パイプライン強化): 2〜3ヶ月先の合計見込が予算を大幅に下回る場合、その月に向けたパイプライン創出活動を提案…

パターンC(確度向上): 「見積中(中)」や「見積中(低)」の案件が存在する場合、それらの確度を引き上げるためのアクションを提案…

アクションは**【Week 1】と【Week 2】に適切に振り分け、それぞれ週のゴール**も設定してください。

ここが、私たちのGemが単なる要約ツールと一線を画す、最も価値ある部分です。私たちは、優秀な営業マネージャーが状況に応じて思考するであろう3つの戦略的思考パターンをAIに組み込みました。

  • パターンA(目先の利益確保): まずは足元の、確実に取りに行くべき案件に集中させる。
  • パターンB(未来への種まき): 数ヶ月先のパイプライン不足を早期に警告し、先手を打たせる。
  • パターンC(機会の最大化): 放置されがちな中・低確度案件へのアプローチを促す。

Gemは、入力された最新の案件データを基にこれらのパターンを自動で評価し、「今、チームが何をすべきか」を具体的な顧客名と共に提案します。さらに、アクションを2週間分の時間軸に落とし込み、週ごとのゴールまで設定することで、単なる”ToDoリスト”ではなく、実用的な”行動計画”を生成します。

これにより、経験の浅いメンバーでも、まるで熟練のマネージャーが隣にいるかのように、常に的確なネクストアクションを考えることができるようになります。

4. 「未来」の予測:潜在的リスクの自動検出

【ルール④】懸念されるリスクの叩き台の自動生成

案件データを分析し、以下のような典型的なリスクを自動で抽出し、記述してください。

依存リスク: 特定の月に、少数の大型案件に売上が大きく依存している場合、そのリスクを指摘…

パイプライン不足リスク: パイプラインが予算に対して明らかに不足している月があれば、そのリスクを指摘…

最後に、Gemは売上の健全性を評価する「リスク分析」を行います。特定の大型案件に売上が依存している月の脆弱性や、将来のパイプライン不足といった、ビジネスにおける典型的な失敗パターンをAIが事前に警告してくれます。

これにより、チームは「今月は大丈夫そうだ」という短期的な安心感に満足することなく、**「しかし、来月はGHI社の案件が失注すると目標達成が困難になるから、今のうちから対策を打とう」**といった、より長期的で健全な議論を始めることができるのです。

結論:AIとの協業が、未来の”作戦会議”を創る

この「週次リカバリープランGem」を導入したことで、私たちのチーム会議は劇的に変わりました。

  • (Before): 1時間の会議のうち、40分が進捗報告とデータ確認。残りの20分で曖昧な精神論を語り合う。
  • (After): 会議の冒頭2分で、Gemが生成したプランを全員で確認。残り58分は、プランの叩き台を基にした「では、具体的にどう動くか?」「このリスクにどう備えるか?」という未来志向の作戦会議に集中できる。

データ集計と資料作成の時間はゼロになり、チームの貴重な時間は、戦略を議論し、顧客への価値提供を最大化するためだけに使われるようになりました。

Gemは、私たちの仕事を奪う存在ではありません。むしろ、面倒な作業を肩代わりし、人間が見落としがちな戦略的視点を提供し、私たちの思考を拡張してくれる**最高の「ビジネスパートナー」**です。

株式会社ixisは、kintoneをはじめとするクラウドサービスの導入支援を通じて、お客様の業務効率化に貢献してまいりました。私たちはその歩みを止めることなく、Gemのような先進技術を自社の業務プロセスに深く組み込み、そこで得られた知見とノウハウをお客様に還元していくことで、皆様のビジネス成長をさらに力強く支援してまいります。

AIと共に、未来の”作戦会議”を始めませんか?

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