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杉原 里志

「みんなでやろう」という病

組織マネジメント 2023.01.28

リーダーで次のような

意見をいう人がけっこういます。

 

セクショナリズムはいけない。

会社の成長を阻害する組織課題だ。

 

だからセクショナリズムを超えて

社員全員が協調して集客と収益の

高い事業へと育成していこう。

 

みんなでお互いを思いやりながら

がんばろう、と。

 

すると社員たちは、

リーダーのその正論っぽい言い分に

思考を止めて大きくうなずいてしまいます。

 

しかし私は、この

「あいまいな全社的同意形成」

こそが曲者で

最大の組織課題だと感じています。

 

理由は簡単です。

 

セクションごとの

ときに部門エゴにも映る

自己主張や意思表明が生まれる

土壌そのものを破壊してしまう

可能性があるからです。

 

「セクショナリズムはいけない」

と言われて、胸のうちで

ニンマリするのは誰でしょう。

 

特に戦略的な主張も持たず

創造意欲も高くないが

プライドは高い。

そんな社員です。

 

そんな社員ほど、

「新しいアイデアやチャレンジ」

を提案するビジョナリーな社員を

うとましく感じる傾向があるものです。

 

なぜなら

現状に風穴をあけようとする

起案者のハツラツとした創造的姿勢は

自分の価値を相対的に

下げてしまうからです。

 

多くのリーダーは

組織を活性化したい

創造的にしたい

といいます。

 

リーダーの視点をもった社員を

たくさん育てたい

というにもかかわらず

「セクショナリズムはダメだ」と

個人や部門の思考や感情の発露を

まっさきに抑えにかかります。

 

現状を変えていこうという

エゴの強い社員の居場所をなくして

均質化を求める社員が

喜ぶ精神風土をつくってしまう。

 

そのくせ、経営視点を要求している。

このような矛盾と破壊を

はらんでいるのが

「セクショナリズムを廃せ」

というメッセージです。

 

セクショナリズムの廃止に

深い思慮もなく

同意した組織は

どうなるかというと

 

部門内部でも部門間でも

利己的な主張とみなされることを恐れて

誰からも文句が出ないように

意見を穏やかに抑制するでしょう。

 

その結果、

「まわりを気にするばかりの協調」

が、目的化した組織になるわけです。

 

こうなると、

事業を伸ばす

戦略的主張は生まれません。

 

「経営視点を持とう」は、

形骸化したカケ声で終わります。

 

これは、

「空気を読む悪しき忖度」

というものでしょう。

 

協調という名の

「ことなかれの依存心」と

「損得への目配り」が組織を支配する。

 

息苦しい、忖度村の完成です。

 

新しい試みに踏み出す仲間には

「あいつはわかっていないね」

と嘲笑があびせられる。

 

忖度村のお祭りは、

目立つ個性への陰湿ないじめである。

 

「いやいや、

 組織の利益につながる正しい主張ならば

 もちろん大歓迎!

 みんなには、意見をどんどん

 発信するよう呼び掛けている」

という声も聞こえます。

 

しかし、

「セクショナリズムは悪」

という意識が前面化した組織は

まずそうはなりません。

 

「変革の考えを誰かが述べるが、

 みんなが空気を読むから実現しない。」

「意見を言わせるが、細部に文句をつけてつぶす。」

そんなむなしい循環で覆われるからです。

 

こんな組織から、

経営視点をもった社員が生まれるなら、

それは奇跡です。

 

もし、その会社が悪しき

セクショナリズムに悩まされているとしたら、

それは部門エゴのせいではありません。

 

社員におけるリーダー視点とは、

それぞれの主張や意見というエゴが

客観的でクールな議論によって

修錬されて結ばれていく

この“一点”にあるのだと思う。

 

クールでていねいな議論は

意見の矛盾を露呈させます。

 

そして、それだけで終わらず

部門ごとの歪みを削り取り

いびつな部門連係の

噛み合わせをよくします。

 

結果、部門の部分最適はうまく消化されて、

より高いレベルで全体最適解が生まれていく。

 

客観的でクールな議論を、

ていねいで細かい言語力で

実践できるならば、です。

 

つまり、社員の経営視点や

当事者意識が育たないのは

セクショナリズムのせいでは

ないのですよ。

 

それは濡れ衣で、逆効果。

 

健全なセクショナリズムの

衝突の先にこそ経営視点は

生まれるのだから。

 

経営視点や当事者意識の

邪魔をする真犯人は、誰でしょう。

それはセクショナリズムの

衝突を吸収できないリーダー達の

「貧しい言葉力と議論力」であり
その結果生まれる

「同調圧力による協調精神」です。

 

なんだか、昨今の日本社会の

問題そのもの、に見えてきますね。

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