- 杉原 里志
生き残りをかけて、働く。
こだわりの商品をつくり
社員をその世界に巻き込んでいく。
クリエイターのちからを借りて
顧客を巻き込んだ新しいブランドをつくる。
理論上それは可能です。
実際に成功している小さな会社も
たくさんありますし、みてきました。
しかし、どんな会社でも
やればできるというものでもありません。
このやり方には明らかに
向いている会社と
向いていない会社があります。
その境界線は色々ありますが
一番大きな影響を与えるのは
会社としてそのこだわりが
本物かどうかということ。
それ以上にもっと重要なのは
それはそもそもトップやリーダー自身が
自らの仕事に惚れ込んでいるのかどうか
ということ。
これはビジネスモデルに自信があるとか
将来性を見込んでいるとか、
そんなものに惚れ込んでいては
意味がありません。
事業そのものに収益を超えた価値を
感じているのかどうか。
そして、日々命を削ってやっている
その仕事が心から好きなのかどうか。
「なぜこの仕事をやっているのか」
「なぜこの仕事が好きなのか」
この2つの質問にどう答えるのかで、
すべてが決まる。
その答えには人の心を惹き付ける
魅力があるだろうか。
私も一緒に追いかけてみたいと
思わせられるワクワク感はあるだろうか。
仕事だから、仕方がない。
好きとか嫌いとかはアマチュアの言うことだ。
そんな声も聞こえてきます。
現在、景気はいいとは言えないでしょう。
不況はいったいどこから
生まれてきているのでしょう。
コロナだからか。
お金がないからか。
それともワクワクさせるものが
ないからか。
伝えるのが苦手なら
誰かに任せるのもいいでしょう。
それは重要なことなのですが
本質的ではないからです。
しかし、伝えるべきものが
今やっている
仕事の中にないのだとしたら。
ただ食べていくためだけに
やっているのだとしたら。
これほど大きな問題が
他にあるでしょうか。
人はいったい何のために働くのでしょう。
あるいは何のために消費活動をするのでしょう。
生きていくため。
経営者がよく使う言葉です。
それはとても便利な言葉でもあります。
だから食べるために生き
生きるために、働くのだ。
でも、それは本当なのでしょうか。
中小企業に必要なのは
働くことの意味です。
社長はそれを語れなくてはなりません。
あるとき、
「生き残りをかけて、働く。」
という人のメッセージに対して
「僕らは生き残るために
生きているわけではない」
と発言して、随分と相手を
嫌な気にさせてしまいました。
ただ、どうしても
大切な価値観だったのです。
「何のために働くのか」という質問は
「何のために生きているのか」という
質問と同意義だからです。
「その仕事には人生をかける意味と
やりがいがあるのですか?」
そう尋ねられているのです。
人類の生産性は人間が一人も
死なないレベルをとっくに
超えています。
死なないことが目的ならば
もはや新しい事業を起こす
必要などはありません。
人類は、もう前に進む必要が
ないのですから。
しかし、私たちは進まずには
いられません。
生きていくことに意味が必要だと
少しでも考えているのであれば
「食べていくため」という
答えは絶対に言ってほしくない。
働く目的を見出すこと。
そしてそれに関わるスタッフや
社員に見せていくことこそが
トップに求められている最大の
役割だからです。
杉原の勝手な偏見もありますが
何よりも重要な社長の仕事です。