- 杉原 里志
はじめに、言葉ありき。
マーケティング
2022.12.16
12月も下旬。
社内で、ようやく2期を終え3期目に入る
自社の計画を考えていました。
計画ですから、
売上の計画や、販売計画、
販売チャンネルを考えたり
商品構成を考えたり。
師走の忙しい日常で、
これまでのことや、
これからのことを、
あれやこれやと考える、貴重な時間です。
あらためて、ビジネスとは。
商品とは、マーケティングとは。
そんなことを考えていました。
ビジネスは、
商品サービスを売る行為です。
たくさん売りたい、
と多くの経営者は思っています。
「商品サービスは、ある。あとは伝え方だ。」
伝える対象をはっきりさせ、
伝える頻度をあげれば、きっと売れる!
「webマーケティングだ!」
「webプロモーションだ!」
そう考えている方も少なくありません。
「伝え方が大事」
という考え方、
ずいぶん浸透してきました。
でもずっと違和感があります。
「伝え方」なんて
「伝えたいこと」がなければ
考えようもないだろう、と。
「けっこういい商品はある。」
「伝え方をどうにかすれば売れる。」
そういう相談をよく受けます。
でも、それは、たぶん勘違いです。
どこが勘違いかというと、
じつは商品はまだない、のだろうと。
じつはまだできていない。
モノが溢れかえる世の中ですから、
「商品の定義そのものが変わった」
と捉えるのが自然かもしれません。
食べ物が溢れかえれば、
食べ物の定義がより厳しく変わります。
それと同じことです。
つまり、飽商、飽ブツ
ともいうべき現代にあっては
「伝えたいこと」が
モノやサービスに内包されてようやく
「商品ができた」と考えるのが良いのでしょう。
商品の強みや特長という
「伝えたいこと」を
ちゃんと口で優先順に話せる状態。
言葉として明文化できる状態。
経営者や社員がそんな状態になっていて
モノにそれらをくっつけて
たどたどしくてもきちんと説明できるならば。
それは「商品」になっている。
もし、そんな状態になっていないなら、
まだそれを「商品」とは決して呼べない。
まだ「商品もどき」に過ぎないのだと思うわけです。
「伝えたいこと、あるよ。うまく言えないけど・・・」の、
この、うまく言えない、がクセものです。
うまく言えないということは、
曖昧にしかつかんでいない、
定義していないということ。
曖昧なものは定着しません。
曖昧な考えは早晩、風化します。
つまり、「伝えたいこと」が
まとまっていないということは、
まだない、ということなのです。
伝えたいことを内包しない「商品もどき」
伝えたい価値がはっきりしない「商品もどき」です。
「伝え方」をどれだけ工夫しても、
「伝える頻度」を増やしても、
それはおのずと”うわっつら”とならざるを得ません。
その宣伝はひたすら
”うわすべるばかり”です。
中小企業のブランドは、
認知度もあり固定ファンの
裾野も広い大手のブランドとは違います。
「ブランディングなんかしなくても
そこそこ宣伝投資すれば売れる」
という、理想のブランド価値はありません。
そう。
理想の、つよいブランドというのは、
「伝えたいこと」どころか、
しっかりと「ブランド価値」を
内包しているといえます。
極論ですが
ブランディングなんかしなくても
売れる状態を作るのが、
ブランディングなのでしょうね。
では大手にはない、
中小企業ならではのアドバンテージは何でしょうか。
中小企業や、
中小の事業部の力とは?
大きな組織より、優っているところは、どこでしょう。
硬直していないところ?
柔らかいところ?
自由なところ?
ちがいます。
1番の強み。
それは、「人が少ないこと」。
人間の思いや考えには、
カタチがなく、
見えませんし、さわれません。
何万、何千、何百もの人間がいたら、
見えない思いや考えは、
千々に細切れて
まとまりがまったくなく
さまよう想念になります。
だから大きな組織は、
たくさんの厳格な
規則や約束事を作って、
秩序と隊形を保ちます。
四方八方に
散乱しそうになる想念や行動を、
なんとか制御し、統率するためです。
経営と現場、
現場と現場の、
意思疎通に苦心する。
官僚化、形式化、
セクショナリズム。
組織不活性と
沈滞ムードを逃れるための模索は
今日も明日も継続されていきます。
ですが、10人、50人、
100人の小規模ならどうだろうか。
中小の組織なら、
想念や考えを、
通わせることができる。
みんな顔見知り。
家族構成や、好みの食べ物や
趣味まで知っていたりする。
手がとどく近い関係とは、
「考え」、すなわち
「言葉」がとどく関係です。
商品サービスにおいてお客さんに
「伝えたい価値」。
会社の考え方や
風土や成り立ちにおける
「伝えたい価値」。
自社で働らくうえでの喜び、
仕事における「伝えたい価値」。
会社を理解し好きになるために、
社員みんなで
「伝えあいたい自社の物語の価値」
すべては言葉であり、
少人数だからこそ、
それらの言葉はとどくのだろうと思います。
人間は、「言葉」なくしては、
何事も達成ができない。
言葉なくしては、脳みそも、
想像力も、働かない。
言葉で過去を捉え直す。
学ぶ。現在に生かす。
言葉で未来を描く。
言葉がなければ、
過去現在未来は姿を現さない。
言葉は、時間で、歩みなのでしょう。
企業活動という名の歩みは
言葉そのものなのです。
言葉を、近距離で通わせることができる少人数。
言葉を、共に練り上げることができる仲間関係。
組織にとって、
これほど強力なアドバンテージはないでしょう。
中小の組織には、大手のようにお金はありません。
人もいない。
でも、言葉がある。
中小だからこそ、豊かな言葉を、濃密に共有し得る。
この中小ならではの特恵ともいうべき、
屈強なアドバンテージを、
粗末にしている会社が多いな
と、感じます。
それはまさに、
掛け値なしの「宝の持ち腐れ」です。
厳しい市場競争に追われて、
webマーケティングのトレンドに焦って飛びつく。
仕掛け方、伝わり方、
感じさせ方がぜんぶだ、とばかり、
小手先のテクニックに走る。
採用ブランディングも、
仕事人を集めることが本質なのに、
あいかわらず「ジョブ型」での集客・選考はしない。
「メンバーシップ型」で、就職ではなく、
あいまいな動機の就社を推進。
「 新人のプロ意識が足りない」
と嘆いても、そもそもが就社なのだから、
その小言もお門違い。
組織ブランディングにひもづく社員研修も、
人事評価などの制度設計も、
ひたすら一般論がベースのプログラム。
自社ならではの価値判断や
ストーリーが組み込まれていない。
自社ならではのかけがえのない
実態と未来展望を、
なぜか没却するし、
黙殺してしまいます。
「会社と仕事は、楽しい。」
働くことを斜めからではなく
まっすぐ肯定して、
力強く自分の足で歩む人を増やしたい、
と、願っています。
人の活路が、会社の活力ですし
成長と発展の活力になります。
そして、人を活路へと導くものは、
活き活きとした 「言葉」だとも思います。
重要なwebマーケティングや伝え方だからこそ、
優先順位を誤ったり、
偏重したりして、台無しにしてはなりません。
台無しとは、土台が無いことであり、
では、その土台に当たるものは
何かと言えば、「言葉」なのです。
「言葉」の開発を土台にした
「活路」の開通により、
人の前進力を高めましょう。
良き未来という、
この世のものではない実態ゼロを、
この手にとりたい「花」に見せてしまう力。
それが、「言葉の力」です。
「理念」という言葉を。
過去現在未来という
これまでとこれからの厚みをもって、
借り物ではなく、なりたい自分たち、
を根拠に開発する。
「ブランドの特長」や「戦略」という言葉を。
社会への貢献 ・ 共生という視座と、
自分たちの豊かさという
正しいエゴとの調和をもって、独自化、濃密化しよう。
「精神風土」「行動原則」という言葉を。
社歴という見えない資産と
未来展望という希望をフラスコに入れ、
丁寧に撹拌して、おしつけがましくなく抽出しよう。
中小の組織には、
これまでの物語とこれからの物語を、
みんなで共有する力。
そこに人ぞれぞれが自分を乗っけながら、
共感同感する力があると思います。
さらには、次の物語を、
みんなで共に編み上げる構築力もある。
人間は、言葉によって、駆動する。
私たちは、言葉を共有した人間の活路によって、
活力をもって駆け始めることができる。
12月も、後半。
1月からの事業を考えていますが
そういった言葉の大切さを
言葉の重要性を感じています。