- 杉原 里志
粗利だけ、見る。
「社長、今月の業績はどうでした?」
そう聞かれたとき、
あなたの頭に浮かぶものは何でしょう。
もしそれが「売上」だったとしたら、
あなたの会社、
危険信号かもしれません。
え? 業績と言えば売上のことでしょ?
そう思われたかもしれません。
でも、はっきりと言います。
その考え方、間違ってます。
これまで私は、たくさんの会社の
業績会議に参加してきました。
いろいろな部署の方が口を揃えて、
「今月の売上は◯◯万円でした」
「売上の達成率は◯%でした」
と発表します。
そして、売上目標を達成したら喜び
未達の場合は、落ち込むのです。
別に普通のことじゃないか。
それの何がおかしいのか。
そう思いますか?
でも、私からすれば、
それは意味のない会議です。
それはなぜか。
たとえば、何らかの仕事を、
1000万円で受注したとしましょう。
確かに売上は1000万円です。
でもそれは必ずしも
「1000万円儲かった」わけではないのです。
顧客から入金されるのは1000万円でも、
原価が800万円かかっているとしたら、
手元に残るのは200万円です。
つまり、200万円しか儲かっていない。
一方、売上は500万円でも
原価が100万円しかかかっていなければ、
それは400万円の儲けとなります。
会社が着目すべき「業績」は、これ。
売上から原価を引いた額、
すなわち「粗利」です。
弊社が支援に入るときは、
まず業績の資料から
売上の項目を削除します。
会社が見るべきは、
売上ではなく粗利だからです。
だから、目標設定も
「売上目標」ではなく「粗利目標」。
業績会議でも、
売上の報告は必要ありません。
粗利のみでOKです。
「今月いくら売り上げたか」ではなく、
「今月いくら利益があったか」
だけを報告すればいいのです。
「売上」という、
さして重要ではない指標に
囚われてしまっている会社は
少なくありません。
社長も、従業員も
「売上がよかったかどうか」
ばかり考えてしまう。
そして、
「1万円札を5000円で売る」ような、
明らかにおかしな仕事が
横行するようになるのです。
まずは意識を
売上から粗利に転換すること。
いや、
「粗利のみ」に転換すること。
これが第一ステップです。
「社長、今月の業績はどうでした?」
そう聞かれたとき、当たり前に
粗利のことが思い浮かぶようになると、
会社が徐々に変わっていきます。
売上額で判断する癖が抜け、
「粗利はいくら?」と
考えるようになります。
粗利目標が未達だった場合は、
「どうすえれば粗利を増やせるだろう」
と考えるようになります。
何か施策を打つ場合も
「それで粗利は増えるか?」が基準になります。
逆に言えば、
粗利のことだけ考えればよくなる。
つまり総じて、
考えることがシンプルになるのです。
指標は明確、数字も明確、だから課題も明確。
皆の思考がクリアになり、
会社がうまく回るようになるのです。
ところで、社長も従業員もなぜ
「売上」に固執してしまうのでしょうか。
いろいろな会社さんを見てきた私の結論は、
ズバリ「それが一番ラクだから」です。
売上はある種オープンな情報なので、
見積書にも請求書にも書かれています。
つまり参照しやすく、
細かく原価を計算する必要もないし、
さらに言えば、ある程度調整も可能です。
1万円札を5000円で売ることも
理論的にはできてしまうわけです。
一方の粗利は、そうはいきません。
計算は面倒だし、調整もききません。
1万円札を5000円で売ったら、
粗利はマイナスになってしまいます。
だから、ラクな「売上」に逃げる。
そういうものなのです。
ということで、
会社の業績を考える際は
売上ではなく粗利で考えよう、
というお話でした。
もちろん、業績以外の部分、
たとえば人事評価などでは
他の指標があってもかまいません。
勤務態度とか、リーダーシップとか、
いろいろあってしかるべきでしょう。
ただ、会社の業績は粗利で。
いや、「粗利のみ」で考えましょう。
そうしなければ、
1万円札を5000円で売る会社に
なってしまうかもしれませんよ。